遊び心にあふれる絵本や淡い色調の風景画で知られる画家の安野光雅(あんの・みつまさ)さんが、昨年12月24日、肝硬変のため死去した。94歳だった。葬儀は家族で営んだ。
1926年、島根県津和野町の宿屋に生まれた。画家になることを夢見ていたが、復員後に山口で代用教員に。50年の上京後も、教員生活を続けながら絵を描いた。
絵に専念するようになっていた68年、教え子の縁で最初の絵本「ふしぎなえ」を発表。エッシャーのだまし絵や心理学の図案に影響を受けて描いたトリック絵本は評判となり、74年にはアルファベットの文字の形が不思議な図を描く「ABCの本」を出版した。芸術選奨文部大臣新人賞やブルックリン美術館賞など内外の賞を多数受け、84年には絵本画家としての全業績に国際アンデルセン賞画家賞を贈られた。2008年に菊池寛賞、12年には文化功労者に選ばれた。
ペンと水彩でヨーロッパやアメリカ、中国、日本など世界各地の風景を描き、77年から「旅の絵本」シリーズを計9冊出版。91年からは故司馬遼太郎さんが週刊朝日に連載していた「街道をゆく」の挿絵を担当。司馬さんが亡くなる96年まで続けた。同誌では、07年から08年に「繪本 三国志夜話」を連載した。
上皇后美智子さまとも親交があり、皇居の草花を描いたことでも知られる。このほか、膨大な数の装丁、絵本を手がけ、エッセーの名手としても知られた。
01年には、故郷に作品や資料を集めた津和野町立「安野光雅美術館」が開館し、17年には京都府京丹後市に「森の中の家 安野光雅館」がオープンした。
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